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Body Journey〜からだつれづれ ♯4 / つるやももこ

編集室Blog。日々の出来事と共に、からだに関する考察や情報を綴ります。

りんごつれづれ

冬から春にかけて、ほんとうにたくさんのりんごを食べた。
イギリスやドイツでは、表現に違いはあれど、「1日1個のりんごが、医者を遠ざける」ということわざがあるくらいにありがたい果実のよう。調べてみると、水溶性と不溶性、両方の食物繊維がバランスよく含まれていて(ちなみに便秘に効果があるのは不溶性)、抗酸化作用をもつポリフェノールや疲労回復効果の望めるクエン酸・リンゴ酸も豊富とのこと。

ふむふむと成分表を見て納得しつつ、いつも思うのは、食べものはみんなありがたいな、ということです。成分、カロリー、そしてバランス。どれも大切なのは確かなんだけれど、目の前にあるこの1個のりんご、赤くて丸くて甘い香りがするこれを、どんどん要素、分子に分解して単なる “栄養” とだけにとらえると、とたんに味気ないものになってしまう。
先日、アロマテラピーの先生と話していてもそんな話になった。
効果・効能という目的が最優先になってしまうと、ハーブ(植物)の豊かな生命観や物語が失われてしまう、と。

風邪をひいたときに、お母さんがすりおろして枕元に運んでくれたりんごは、ぬるくて茶色くなっていてもとってもおいしかった。甘酸っぱく心地よい香りを嗅いで、ポリフェノールがどうの、カリウムがどうのなど言うのはつまらない。
わたしたちは栄養を食べているのではなく、生命力をいただいているのだから。

ところで、2年ほど前に青森を旅して、日本で作られているりんごの品種の多さにびっくりした。
ふじや紅玉、ジョナゴールドなどの割と知っている名前から、金星、名月、北斗など…、すてきな名前が目白押し。ふと、以前旅したドイツで出合ったりんごは、もっと小ぶりで色も真っ赤ではなくまばらで、硬くて酸っぱくて、もちろん蜜も入っていないし名前も付いていなかったなあ、と思い出した。

たまたま手元にあった『家庭でできるドイツ自然療法』という本を開いたら、ドイツ在住の著者が「はじめに」で、庭に自然に生るりんごのお話を書いていた。そこで、野生のものと人工的に栽培をするものの違い(つまりは肥料や農薬のことですね)をたとえに、人間が暮らしの中で西洋の薬に頼り切らないで、ときに自然療法を取り入れながら健やかに過ごす大切さを教えてくれていました。
わたしは、ドイツで食べた野性味溢れる、力のみなぎった果実も、日本のように手をかけ栽培された甘くて大きなりんごもどちらも好き。でも正直、この国の果物信奉というか、過剰なまでにピカピカな見た目(味はもちろんですが)重視の文化を、ときどきもう古いんじゃないかなあとも思ったりする(1個1,000円の高級マンゴーとか)。
ほどほどってないのかな、って。
そんななか、今年スーパーで見つけたりんごは、まさにほどほど。“葉とらずりんご” と箱に書かれたりんごは、大きさも色もバラバラ。きっと普段は果実を効率よく太陽に当てて、品質を均一にするために、生育段階で葉っぱを除去するんでしょう。その作業を省いていますよ〜とたった一言で伝わってきたし、お値段も少しだけお安めでうれしい。

翌朝。
さっそく切ってみたら、種の周りに黄金の染みが。割ってみないとわからない、あったらなんだか嬉しくなる、日本ならではのりんごあるある。ちょっと得した気分になるのは自分だけだろうか。
そろそろ、東北のりんごの季節は終わり、スーパーの陳列棚には、西からやってくる薄黄色の柑橘が並びはじめている。
その柔らかい苦味と酸っぱさにブルっと身震いをしながら、からだも春へとチェンジです。

つるやももこ

つるやももこ

女子美術大学グラフィックデザイン専攻卒。
在学中より制作していた私家本をきっかけに、2000年より全日空(ANA)機内誌『翼の王国』編集部で取材・執筆・編集の仕事に就く。


2006年独立後、フリーランスとして「旅とひと」をテーマに執筆、寄稿。女性誌や企業誌、フリーペーパー、単行本などの編集に携わる。


身近な人の体調の変化や病に寄り添った経験から、こころとからだは切っても切り離せないものだと実感。2018年、日高しゅうの協力を得てHōʻailonaを立ち上げる。

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