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Body Journey〜からだつれづれ ♯9 / つるやももこ

編集室Blog。日々の出来事と共に、からだに関する考察や情報を綴ります。

抱きしめる

2018年の1月。モロカイ島滞在最後の日のハグを今も時々思い出す。
3人で旅していたわたしたちを空港まで送ってくれた山崎美弥子さんが、別れ際に抱きしめてくれた。
わたしの番になったとき、
「きちんと話を聞いてあげられなくてごめんなさい」
美弥子さんはそう言って、ポケットから取り出した小さな塊を手のひらに乗せてくれた。
それは、薄紫色のなめらかな貝殻だった。貝殻には細く繊細なリボンが巻きつけてあって、その貝殻とリボンの色は島の夕陽の色にも、美弥子さんの描く絵の色にも見えた。

この場所にたどり着く4年ほどの間に、立て続けに大切な人たちと今生でのお別れをしました。生まれたときから、死ぬことだけは決まっている。それはどうしようもないことだけれど、もう悲しい気持ちはいい加減手放したい。そう思って決めた旅。

前の晩、そんなモロカイへの旅のきっかけをぽろりと話したのでした。

「きちんと話を聞いてあげられなくてごめんなさい」

わたしはそのひとことと、その優しいハグにうちのめされてしまいました。
美弥子さんがあやまる理由はどこにも無い。
突然、たった数日間だけ訪れた旅人なのです。すれ違うだけかもしれないわたしに、どうしてそんな優しさを惜しげも無く与えてくれるのだろう。同時に、わたしが特別ではなく、それが美弥子さんのふつうなのだと感じたのでした。

そのとき、自分のからだに張り付いていた重たいものがストンと地面に落ちた気がしました。

9ヶ月後、このWEBサイトがオープンしてしばらく経ったときに、美弥子さんから寄稿のご提案をいただき、間もなく「サンダルウッドの丘の家より」の連載が始まりました。

プロローグの文章には、あの旅で感じた「どうして?」の答えが書かれてありました。

それは”秘密の魔法”の中のひとつなのだそうです。
”この世界で一番の贈り物”なのだそうです。
”両腕さえ持ってこの世に生まれて来た、それだけ幸運であったらなら、今すぐに誰にだってあげることができるもの”。
それが、「抱きしめる」ということ。
それは”このうえない贈り物”であるということ。
簡潔に、ゆるぎない確信に満ちた言葉が綴られていました。

ホーアイロナでワークショップに参加した方はご存知のとおり。帰りがけに、講師と編集室の2人とハグして別れるのが恒例です。
これは言うまでもなく、この経験が気づかせてくれた親愛の挨拶の方法です。

去る6月8日に開催した美弥子さんのお話会では、この抱きしめる=ハグについてが話題にのぼり、そこで意外なお話も飛び出しました。

美弥子さんもまた、モロカイで暮らすようになってから、島の人々が与えてくれたハグにうちのめされ、感動し、自分自身もそんなハグがしたいと強く思うようになったそうです。
でも、最初はなかなか上手にできなくて、夫に相談をしたら、気負わずに練習をするように抱きしめ続ければいいと言われたそう。その効果は……もはや書くまでもなく。
しかしながら、美弥子さんいわく、まだまだ練習中の身、なのだそうです。

お話会の翌日に、会に参加した友人からこんなメールが届きました。

娘から寝る前に「ママ、ぎゅーして」って言われて、疲れていたりすると時々めんどうだな、
などと思ってしまうときもあったけど、ハグだった! ちゃんとハグしようって思いました。気づけてよかった。ありがとう。

となりに大切なひとがいるなら、迷っている暇はない。
抱きしめてしまいましょう!
せっかくこの世にからだを持って生まれてきたのだから、このからだが、ここに在るうちに。
自分が抱きしめられて心地よかったら、だれかにその心地よさを味わってもらう。
美味しいおまんじゅうを食べて感動したら、「ねえ、これおいしいよ」と誰かにおすそわけしたくなるくらい気軽に……。

ちなみに、わたしの場合、
となりに誰もいないときには、自分の両腕で自分を包んであげます。もちろん、だれも見ていないところで、ですが(笑)

つるやももこ

つるやももこ

女子美術大学グラフィックデザイン専攻卒。
在学中より制作していた私家本をきっかけに、2000年より全日空(ANA)機内誌『翼の王国』編集部で取材・執筆・編集の仕事に就く。


2006年独立後、フリーランスとして「旅とひと」をテーマに執筆、寄稿。女性誌や企業誌、フリーペーパー、単行本などの編集に携わる。


身近な人の体調の変化や病に寄り添った経験から、こころとからだは切っても切り離せないものだと実感。2018年、日高しゅうの協力を得てHōʻailonaを立ち上げる。

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