Nā ʻŌlelo Liʻiliʻi #2 / 日高しゅう
ハワイでは言葉に「マナ」と呼ばれる神聖な力が宿っているとされています。
素朴だけれど、奥が深い、知るとちょっとしあわせになるハワイの言葉をご紹介します。
Makani(マカニ)風

ハワイ島。風で流れる雲。
ハワイアンソングに本当によく登場する「カマカニ(風)」。
ハワイアン・アルファベットでの表記は「ka makani」。定冠詞(英語のtheにあたる)「ka(カ)」と名詞「makani(マカニ)」が合わさって「ka makani(カ・マカニ)」です。
「カマカニで一語だと思ってた!」なんて、気にしなくてOK。
ハワイ語はもともと口頭伝承なので、耳で聞いて覚える方が正統派かもしれません。
自然が豊かなハワイでは、前回の虹同様、風にもたくさんの名前があります。
Ahe(アヘ)やさしいそよ風
ʻŌnini(オーニニ)ひと吹きの風
Pāhili(パーヒリ)強い風
他にも、
Puʻulena(プッウレナ)ハワイ島のキラウエア火山からプナに吹く冷たい風
Kaiāulu(カイアーウル)オアフ島ワイアナエに吹くやさしい貿易風
のように、島ごと、土地ごとに、ここには書ききれないほどの風の名前があります。

カウアイ島、ナパリコースト。この日はやさしい風。
ちょっと話はそれますが、ハワイでは「香り」がとても重要。
美しさを表現するときにも、香りについて言及します。
愛する人を歌う時、その香りについて語られることが多いです。
愛する人の香りは、甘く美しい。そしてその香りを運ぶのは、いつも風なのです。
風と香りを一語で表現する言葉もあります。
Moani(モアニ)良い香りのするやさしいそよ風
Māpu(マープ)風に吹かれた良い香り
「風」で私が真っ先に思い出す曲は、『Ka Makani Kāʻili Aloha』。
直訳すると、「風が愛を奪い去る」。1916年に作られた古いハワイアンソングで、マウイ島に伝わる物語が元になっています。
妻が他の島から来た男に恋をして出ていってしまったことを嘆いた夫が、ipu(イプ/瓢箪)に祈りを閉じ込めて海に流しました。ipuは風によって妻の元に運ばれ、それを開けた妻は、不思議な風に包まれて、夫への愛を思い出し帰ってくるのです。
いろいろな人がカバーしていますが、私のお気に入りは、Weldon Kekauoha(ウェルドン・ケカウオハ)。
ちょっとかすれた甘い歌声が、切ない歌詞にぴったりです。
そして、もうひとりのお気に入りが、KONISHIKI。
日本ではお相撲さんのイメージですが、もともとハワイの人なんですよね。
現役時代を知る人からすると、意外なほどにやさしい歌声かも。ぜひ聴いてみてください。
フラでも、たくさんのハラウがこの曲を踊っています。
私は、2010年のミスアロハフラMahealani Mika Hirao-Solem(マヘアラニ・ミカ・ヒラオ・ソレム)さんが踊っているHula Hālau ʻO Kamuela(フラ・ハーラウ・オ・カムエラ)の振りが好き。
好きすぎて動画を見すぎて、振りを覚えてしまったぐらいです。
同じ曲でも振り付けやダンサーによってイメージが変わるので、自分好みのフラを探してみるのも楽しいですよ。
ちなみにウェルドンには、ワイキキのアウトリガー・リーフ・ワイキキ・ビーチ・リゾート内のKani Ka Pila Grill(カニ・カ・ピラ・グリル)で、毎週火曜日に会うことができます。
演奏してほしい曲をリクエストできるので、ウェルドンの生歌で、フラを踊ることもできますよ。
フラを習っている方は、せっかくハワイに来たのだから、思い切って踊ってみちゃいましょう。
ʻAʻa i ka hula, waiho ka hilahila i ka hale.
フラを踊るときは、恥ずかしさは家に置いてきなさい。
ハワイの有名なことわざです。
もちろん踊らずに、曲だけリクエストできます。リクエストした後は、チップを忘れずに。
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日高しゅう
1981年生まれ。東京外国語大学イタリア語学科卒。
イタリア・フェラーラ大学にて、中世美術史を学ぶ。
アロマテラピー業界およびIT企業で広報として勤務後、2017年、語学と文化を学ぶため、ハワイに留学。ハワイ島のロコからハワイ語を学ぶ。
ハワイ各地を旅し、帰国後、つるやとともに『Hōʻailona』を立ち上げる。
入門者向けのハワイ語講座講師としても活動。