からだ読書 ♯1 / つるやももこ
谷川俊太郎詩集『はだか』
谷川俊太郎 著
佐野洋子 絵
筑摩書房(ISBN4-480-80275-4)
ある日突然、友人から送られてきた。
包みを解くと、生意気そうな裸の女の子の絵。
タイトルも『はだか』。
送り主とは出会って1年くらい。頻繁に会っているわけでもなく、お互いの下の名前に”さん”をつけて呼び合う遠からず近からずの仲。でも、話せば共感することが多く、彼女の芯の強さが素敵だなと思っていた。
そんな彼女からの贈り物だった。
薄紙で包まれたえんじ色の布張りの本のページをめくれば、漢字は1つもない。
すべてひらがなで書かれている。
読み進めていくと目が、手がとまった。
ーうそでしかいえないほんとのことがある
わたしは、この時、すっかり裏切られた気持ちでいたのだった。
とある人のとあるうそに気づいて、消沈していたところだった。
言葉は誠実でも、人の心の中なんてわかったものじゃない。
人はうそをつく。だから手放しで信じるもんじゃない。
そう思っていたら、この本が届いた。
ーいっていることはうそでも
うそをつくきもちはほんとうなんだ
あの人は確かにうそをついたかもしれない。
でも、うそをつく瞬間は、うそを超えて本気だったかもしれない。
そう思ったら、もう、いいや、と思えた。
そして、不意になんのメッセージもなくわたしにこの本を送ってきた彼女は、
すごい人だと尊敬した。
そんな彼女は、しばらくして突然に子どもを宿し、ハワイに嫁にいった。
わたしはといえば、すっかり元気になって、次の恋を待っている。
つるやももこ
女子美術大学グラフィックデザイン専攻卒。
在学中より制作していた私家本をきっかけに、2000年より全日空(ANA)機内誌『翼の王国』編集部で取材・執筆・編集の仕事に就く。
2006年独立後、フリーランスとして「旅とひと」をテーマに執筆、寄稿。女性誌や企業誌、フリーペーパー、単行本などの編集に携わる。
身近な人の体調の変化や病に寄り添った経験から、こころとからだは切っても切り離せないものだと実感。2018年、日高しゅうの協力を得てHōʻailonaを立ち上げる。