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Aromaクンクン ♯8 / 原田裕子

カンボジアの旅2

カンボジアへの旅の一番の目的は沈香が養殖されている農園を見せていただくことでした。
沈香樹という植物はそれ自体に香りはないのですが、木に傷がついたときに、木自体が自らを修復するために作り出す樹脂に大変良い香りがします。
沈香に関わる記述は、日本書紀の中にも登場し、沈香は飛鳥時代に中国、朝鮮と経由して仏教とともに日本にもたらされました。
それ以外の香木とともに沈香は、仏教儀式に用いられるとともに、その香りは、平安貴族、武士の時代となっても時の権力者にこよなく愛されました。
そして芸道の1つ香道の世界でも沈香は大変重要な香りとされています。

現在、沈香は乱獲などの影響もあってワシントン条約により絶滅危惧種の1つに指定されています。お香製品を作る際にも沈香は欠かせない香木ですから、沈香を安定的に供給するための打開策として考えられたのが養殖沈香というわけで、今回はその農園をカンボジアまで行って見せてもらうこととなったのです。
もちろん、養殖の沈香、残念ながらその香りは天然のものに遥か及ばないものです。
さらに沈香の養殖の難しいところとして、沈香樹を植えて、沈香の樹脂がつくられるように何らかのダメージを木に与えるという処理をしたとしても沈香が絶対できるというわけではないということです。そのため、沈香農園も厳しい現実があるようです。
今回見せていただいた沈香農園は小規模だと聞いていましたが、実際に行ってみると思っていたより大きく、よく管理されていたように感じました。

沈香が樹につくられた後には、香木としての加工が行われるほか、精油を得るために蒸留も行います。実は欧州では沈香はアガーウッド精油として扱われることがほとんどなのです。
精油の香りと、香木として例えば線香に仕立てて香りを楽しむ場合では、含まれる香気成分が異なるため、香りもずいぶん異なります。それぞれに良い香りですが、香木としての香りは中国、日本ではとても好まれています。
農園では、香木として加工している作業風景もみせてもらい、少しだけ材を削る作業もさせてもらいました。
「百聞は一見にしかず」
我々が扱う香りが、どのような植物から得られ、どのように製品にされ、場所によりどのように香りが異なるか、私も香りを生業としている以上、これからも様々なところに実際に赴き積極的に体験していきたいと思っています。
そしてそれ以上にいつも思うことが、現状を知ることで、植物から得られる貴重な香原料や精油を、今まで以上に大切に使いたい、そして現場で働くそれぞれの国の人々がこの大切な資源をいわゆる先進国と言われる国に搾取されないようにできないものか、この2点です。

下の写真は、シェリムアップにある遺跡群の1つ、タプローム遺跡です。

ここは古い遺跡を大木が占拠し、古い石を苔が覆っている風景が印象的な場所です。植物が長い時間をかけて生き延びるためにあらゆる場所に適応する、そんな植物の底力を見せつけられたような気がしました。

植物は生きるための力に溢れています。だからこそ我々はその香りにも魅了されてしまうのだと思います。

人間同士も、地球上にいるすべての生き物同士も、互いに尊重しながら、ときに自己の生存をかけて闘いながら、共生すべき地球上の仲間です。人間が自分たちの都合だけで、バランスを欠いた形で他の生物を支配するようなことがなくなりますように。。。
心からそんなことを祈り今回の旅を終えたのでした。

原田裕子

原田裕子

香司 / アロマセラピスト / 香りアドバイザー
会社員を経て、好きが高じて香りの世界へ。


調香、アロマテラピーと西洋の香りから始まり、現在は日本の香りを作る香司としても活動。


自然の恵みである香りを消費するばかりではない、"サステナブルな"香りのある暮らしを提案している。

法人向けに、オリジナルの香りの開発も行う。

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