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Baby’s coming! ♯17 / Saori

母乳育児ってどんなメリットがあるの?

~現役NICU看護師が語る母乳辞典・後編~

こんにちは、Saoriです。新年明けましておめでとうございます。
私は2年連続年越夜勤でした(笑)が、面会に来られていたご家族もいて、病棟全員でカウントダウンをすることができました。
今年はオリンピックもあり、日本にとってスペシャルな一年ですね。読者の皆さんにも、沢山の幸せが訪れますように。

それでは、現役NICU看護師が語る母乳辞典の後編をお届けします。
前編を読み返しながら、母乳育児のメリットを、一緒に学んでいきましょう。

まず経済的であるということは、大きなメリットのひとつです。
綺麗ごと抜きで、育児はお金がかかります。母乳は経済面でも大きな助けになってくれます。
また、災害時に、電気や水道がなくでも赤ちゃんに栄養を与えることができます。日本では年々自然災害が増えてきています。母乳は万が一の時にも、赤ちゃんのための大切な栄養源になります。このことは、最近私も退院指導でお伝えすることが多くなったなと感じています。

前回、母乳は母親の疾患を予防することに繋がるとお伝えしましたが、赤ちゃんがかかる可能性がある疾患の予防にも効果絶大です。
アメリカの国立衛生研究所の報告では、母乳を一度も飲まなかった児は、乳児死亡率が20%も上がると言われています。先進国であるアメリカであっても、母乳育児をすることで、年間720人の乳児死亡が減少すると言われており、乳児死亡は発展途上国だけの問題ではないことが明らかになっています。つまり、日本でも同様のことが言えるということです。
罹患リスクを低下できる疾患には、急性中耳炎や胃腸炎、小児肥満、糖尿病などだけではなく、アレルギー疾患であるアトピー性皮膚炎や喘息、小児がんである急性骨髄性白血病などもあることもわかっています。

母乳には、免疫を高める効果もあります。
プロラクチンや免疫グロブリンの一種である分泌型IgA、ラクトフェリンなど、赤ちゃんを細菌から守る抗菌作用と、皮膚が赤くなったりボツボツができたりなどの炎症を抑え免疫機能を高める抗炎症作用がある物質が、母乳には含まれています。

通常赤ちゃんは約10ヶ月の間、無菌状態で免疫系を蓄えながら成長しますが、産まれた途端に細菌との戦いが始まります。お腹の中で蓄えていた一番大切な抗体も、約20日で半分以下に。もちろん成長とともに免疫系も発達していきますが、時間がかかります。
そこで赤ちゃんを守ってくれるのが、母乳中の免疫機能です。
IgAやラクトフェリンは初乳に一番多く含まれており、初乳が一番栄養価が高いと言われているのはそのためです。気管支炎や肺炎などの気道感染症やRSウイルス感染症、腎盂腎炎などの尿路感染症などの様々な感染症から、赤ちゃんを守ることができるのです。

母乳の成分は、早産児を出産した場合と、正期産児を出産した場合で、なんと変わってくるんですよ。
早産児のお母さんの母乳には、タンパク質やミネラル、免疫物質が、多く含まれています。
NICUに入院するような早産児や低出生体重児のお腹は未熟なので、人工乳を与えると壊死性腸炎(腸の内部が損傷を受けること)は母乳の2.4倍も発症率が上がります。母乳は、未熟な消化器系に負担をかけずに必要な栄養を効果的に摂取できるように、赤ちゃんの状態に合わせて変化させることができる、生きた栄養源なのです。
そのため私たちNICUでは、母乳の大切さを医師からもご家族へ伝え、なるべく長期間母乳を与えることができるように搾乳支援も行っています。

最後に、前回最後に触れましたが、母乳で赤ちゃんのIQが上がるのは本当なのでしょうか。

実は、医学的な根拠が数多く報告されています。
まずは神経の発達の面。脳が急速に発達する妊娠後期から生後6ヶ月までは、DHAやアラキドン酸など、多価不飽和脂肪酸を構成する物質が必要不可欠です。母乳はこれらの物質を全て含み、神経発達を助け、認知機能を向上を助けます。
青魚に含まれるDHAやEPAは脳の成長にいいことは、聞いたことも多いのではないでしょうか。もちろん、赤ちゃんにとっても同じです。
これらの多価不飽和脂肪酸が認知機能を向上させる根拠の検証は、世界各国で行われています。
イギリスではでは長期的に調査し、26歳時点と53歳時点の認知機能に正の関与を示したこと、アメリカでは胎内発育遅(SGA児)の認知機能へのメリット、オーストラリアでは言語テストの点が男女それぞれ5~8点も高かったことが、それぞれ報告されています。
多価不飽和脂肪酸だけではなく、スフィンゴミエリンやコレステロール、レプチンなどの様々な物質が神経発達と関係することがわかっています。
そして、母乳の成分だけではなく母乳育児による母子の肉体的・精神的な触れ合いによって、脳への刺激を促し神経発達にプラスの影響をもたらしていることが推測されています。

このように、母乳はお母さんにとっても赤ちゃんにとってもメリットだらけだということが明らかになっていますが、研究に関わる医師たちは、母乳の良さを意図的に伝えなければならない現状に、少し寂しさを感じると話します。

母乳育児は哺乳動物として当然なことであり、当たり前に行われてきたこと。核家族化が進み、母親も社会復帰を早めなければならない現代では、母乳育児は “選択する” 時代になっているのではないかと私は思います。もちろん良い・悪いの問題ではありませんが、育児と仕事双方からのストレスを抱えながら過ごすご家族が増えているのは辛いことです。
それでも家族は、産まれてくる新たな命のために選択をし続けなければなりません。
ずっと伝え続けていることですが、大切な人と家族となったその瞬間から、どんな人生にするかを一緒に考えて欲しいのです。
どんな育児をしていきたいか。ぜひ、私たちと一緒に考えていきましょう。

社会復帰しながら母乳育児を継続する方法、
無理なく母乳育児を続ける方法、
初乳の分泌を効果的に行う方法など、
ご家族が選択した育児に自信を持ち、赤ちゃんと関わることができるように、私たちは支援していきます。

赤ちゃんがちゃんと母乳を飲めているか不安を感じる方も多く、母乳育児は目に見えるサインが少ないことも続けにくい要因です。
でもちゃんと赤ちゃんはサインを出しています。安心してください。
1人のママの不安は、全てのママの不安です。私たちに全部吐き出して、預けてください。
育児は社会のみんなでするものなのですから。

Saori

Saori

1989年生まれ。看護師。
看護師養成高校在学中に見学した出産に感動。
生命の誕生の素晴らしさに魅せられ、母子に関わる看護の領域へ。


NICU(新生児集中治療室)での勤務経験から、病院の中だけでなく、地域や家庭の中でもできる、赤ちゃんやお母さん、家族のケアの周知に取り組む。


「治す」ではなく「全体を整える」、ホリスティックな視点をベースに、妊活・妊娠・出産・子育てに悩む女性に、健やかな身体作りを提案している。


国際ホリスティックセラピー協会チャイルドボディセラピスト1級
チャイルドボディセラピストインストラクター

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