Body Journey〜からだつれづれ ♯14 / つるやももこ
おなかつれづれ
昨年末、伊勢神宮参りへ出かけました。
その旅の途中で立ち寄った場所で、とあるセラピストさんに出会いました。
けんたろうさんは、「チネイザン」というセラピーのセラピスト。
「チネイザン?」
当初、音からは文字が想像できませんでした。つるんとしたお坊さんのような彼の風貌からも、高野山とか比叡山とか、なんか修行のイメージしかわきませんでした(笑)
チネイザン。
文字にすると「氣内蔵」と書きます。
簡単に説明すると、古代中国発祥の気功療法のひとつだそうです。
おなかに触れることで、五臓六腑、皮膚や骨、全身の血流に働きかけるというもの。
東洋医学に端を発するので、その哲学にはもちろん陰陽五行説が関わってきます。
ひと(小宇宙)は自然界(大宇宙)の一部であり、「天人合一(てんじんごういつ)」、つまりどちらも同じ法則に従う。
そして自然界は5つの基本要素(木、火、土、金、水)で成り立っていて、季節(五季)、方位(五方)、それに伴う「風」「熱」「湿」「燥」「寒」などの体感(五気)に基づいて、人体の生理や病理に関係するさまざまな事柄も、この五行に当てはまるというのが中医学の考え方。
さらに、臓器は心(感情)と密接なつながりがあるとされて、感情のアンバランスが不調を招く理由になり得ると考えられています。
チネイザンはその哲学を腹部臓器に置き換えたものなのか……。
ようやく肚落ちして、ぜひ受けてみたいなあと思いました。
単純に、お腹を触ると気持ちがいいじゃないですか。それを人に施術してもらえるのです。
それに、ここ2ヶ月ほど、腹部の張りや硬さが気になっていました。
今夏、働きすぎたことが原因なのは分かっていて、交感神経優位になっているのも自覚があったから。
そして、驚くことに、けんたろうさんのサロンとわたしの実家が、ものすごく近所だということが判明。これはご縁と、年始早々、帰省のタイミングで予約をお願いしました。
受けた感想をひとことで言うと、温かく、とにかく気持ちがよかったということです。施術が進むにつれ、心地よく眠りに落ちるような感覚があるのですが、決して寝落ちするわけではなく、深いところで意識はあるのです。だから、どこを触られているかもわかります。手のひら全体で包み込まれるような感覚があったり、ところどころ、針のようにピンポイントで刺される(決して痛くはないです)ような感覚があったり。ときどき、ぎゅるぎゅるとお腹が鳴って我に返ったりします。そうして、全身がとってもあったかくなっていく。
ゆらゆらとおなか(内蔵)という宇宙に漂いながら、もう少し触っていてほしいなあ、というところで、起こされました(笑)
けんたろうさんの見立てでは、脾臓が疲れているということでした。
そして、この一部分の滞り、硬さには、悲しみや不安の感情を感じるとのこと。
「からだは(良い意味で)変わろうとしていて、実際に準備はできている。でも気持ちが付いていっていない印象。大きな変わり目が間もなくありそうですね」
そう言われて、確信ではないけれど、少なからずわたしも予感としてあったので、納得がいきました。
さて。帰り道からわたしのお腹は活性化し、お掃除が起きました。
それから数日。今はまた停滞しているのを感じます。満月直前の辛さのようなものもちょっとあります。でも、薄紙をはがすように以前の不定愁訴は改善してきています。
からだの調子に完全を求めない方がいい。
これは、「クラブ整体」の禎子ママの言葉。わたしの人生に欠けていたものは「中庸」というものだったというのが、最近になってようやく分かってきたような気がしています。
まだまだ修行中ではありますが。
以上、チネイザンはじめて体験記でした。
けんたろうさんの施術に興味のある方は
→@ukiwa_kentaro
つるやももこ
女子美術大学グラフィックデザイン専攻卒。
在学中より制作していた私家本をきっかけに、2000年より全日空(ANA)機内誌『翼の王国』編集部で取材・執筆・編集の仕事に就く。
2006年独立後、フリーランスとして「旅とひと」をテーマに執筆、寄稿。女性誌や企業誌、フリーペーパー、単行本などの編集に携わる。
身近な人の体調の変化や病に寄り添った経験から、こころとからだは切っても切り離せないものだと実感。2018年、日高しゅうの協力を得てHōʻailonaを立ち上げる。