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満てる ♯3 / 編集部

高知の言葉で「満てる」とは、人生が満ちる、人が死ぬことを表すそうです。
死は、人生の終了ではなく満了。さすれば死について考えることは生についても考えること。
こころとからだの最終地点を目指す旅として、hoailonaは、さまざまな分野の方々に話をお聞きしながら、人生を満了するためのヒントを学んでいきます。

日蓮宗妙善寺住職の的場さんのおはなし【前編】

 

人生の満了について考える中でふと浮かんだ疑問、「私たち日本人って、もともとどんな死生観を持っていたんだろう?」
そんな疑問を解消すべく、編集室はオフィスを飛び出し、江戸時代から続く日蓮宗のお寺にお話を伺いに行きました。
お邪魔した妙善寺は、なんと六本木のグランドハイアットのお向かい(!)に、江戸時代から続くお寺です。
おっとり優しい口調の住職・的場徳雅さんは、元お笑い芸人という異色の経歴の持ち主。現在も、お寺で映画祭を開催するなど、ちょっと意外で面白い活動に取り組まれています。そんな的場さんに、生きること、そして死ぬことについて、仏教での考え方を教えていただきました。

版画/本間尚子 Shoko Honma

-今日はよろしくお願いします。的場さんは元お笑い芸人のお坊さんだとお聞きしました。 

うちの父はいわゆる兼業住職で、平日は日蓮宗新聞という新聞社の会社員をしていたんです。それもあってか、お寺の家ではありましたが、「絶対に後を継ぎなさい」という感じではなくって。子どもの頃は、寺院指定の学校ではない一般の学校に通って、割と自由に育ちました。

父は落語が好きで、母はお芝居が好きだったので、職業の選択肢として、自然とそういう世界に惹かれていいったのかもしれません。

とはいえ修行はして、すぐにでもお寺を継げるような状態にはしていました。

高校を出て、お笑い芸人になると決めて家を出て、バイトをしながらお笑いの養成学校の放送作家のコースで勉強していたのですが、そこでその後一緒に芸人をやる人に巡り合ってしまって。気づけばお笑い芸人養成のコースに顔を出すようになっていました(笑)。

シティボーイズに憧れて、コントなんだけどちょっと演劇っぽくてスタイリッシュな、そんなネタを作っていましたね。アルバイトをしながら小劇場に出たり、ローカル番組のレポーターなんかもさせてもらいました。

檀家さんたちは、僕が社会経験を積むこと自体は賛成してくださっていたんですが、まさかお笑い芸人になるとは思っていなかったのでびっくりしたみたいです。

「若がテレビでレポーターしてるぞ!一体何をやってるんだ?!」って(笑)。

– 好きだった世界から、どうしてまたお寺に戻ってきたんですか? 

思うように芽が出なかったり、父が体調を崩したりってこともあったんですが、“仏様から食べさせていただいている”と実感するタイミングがありました。

家を出て、アルバイトしながら自炊をして、親や檀家さんのありがたさに気づいたんですね。昔の苦行僧が気づくようなことを、今は社会に出ることで体験するのかもしれないです。

お釈迦様は王子様で、ご自身が家を出たときに、初めてそのありがたさに気づいた。一回そうやって家族から離れるという経験が、寺院の子弟だけではなく、皆さんにもあることですよね。

例えば法事でいただくお布施も、皆さんがお仕事で手に入れた中から、ご家族のご供養のために包んでくださるわけです。

お坊さんだけやっていたら、そういうことが想像できなかったと思うんです。

寺に戻ってからは、山梨の日蓮宗の本山で3年間修行しました。あまり詳しくは話せませんが、荒業も経験して、死にかけたりも…。

辛いこともありましたが、この修行期間に恩師と言えるような同業者にも出会え、いい経験になりました。

修行中にも休みの日はあるので、一年目は休みのたびに実家に帰っていたんですが、次第にみんなで温泉に行ったり、近くの老人介護施設で落語を披露したりするようになって、結局二年目からは全然東京に帰りませんでした(笑)。

一緒に修行している人の中には高校生もいて、彼らは日中は普通に学校に通っているので、「クラスに気になる女の子がいて…」なんて、恋愛相談を受けたりして(笑)。

 

– なんだか思っていた修行と印象が違ってちょっと楽しそう(笑)。東京に戻られてからは、写真展や美術展、音楽やお笑いのライブ、映画祭まで、お寺でいろんなイベントを主催されてるんですよね。 

お寺でイベントを始めたのは、お笑い芸人時代の経験からです。たとえば劇場に出演するとなると、自分たちでチケットを売らなくてはいけなくて、それが大変で… 。先輩たちを見ていても、芸人として面白い人が、必ずしもチケットを売るのが上手いとは限らないんですよね。そういう風に才能が埋もれていってしまうのが残念だと思っていたので、少しでも助けになりたいと、若いアーティストの発表の場としてお寺を提供したことが始まりです。

最初は写真展をやって、そこからテレフォンショッキングみたいな感じでアーティスト同士がどんどん繋がって、今に至る感じです。息抜きに行ったバーで知り合ったノルウェー人アーティストが日本に来るたびに遊びに来るようになったり。もちろん普通の人もふらっと遊びに来ていただいていいんですよ。

昔はお寺って、もっと人々にとって身近なものだったんですよね。

大相撲や宝くじなんかも、お寺から始まったものなんです。宝くじはもとは「富くじ」といって、お寺の修繕の資金になっていました。人々が町から町に移動するときに、今でいう出入国管理官みたいなこともお坊さんがやっていたんですよ。落語なんかでも、お坊さんが出てくるものが多いですよね。

お寺は “死んでからお世話になるところ” ではなくて、生きている人たち、檀家さんだけじゃなく、近所の普通の人たちも集まるサロンのようなところだったんです。

お寺に来ると身分が帳消しになるので、お侍さんと道端で寝ているような人が一緒に囲碁を指したりなんかして。

最近はうちだけじゃなくて、お寺や仏教のイメージを変えたいと、いろんな取り組みをして頑張っている若いお坊さんがたくさんいます。10年後、20年後が楽しみだなって思います。

うちもお悩み相談をやっています。カウンセラーではないので、何かに導くというわけではなく、お坊さんになんでも話してみてください、という感じなんですけれど。仏教の教えから紐解いてお話しさせていただいたりしています。

相談に来るのは40代の男女が多いです。男性は転職など仕事の悩み、女性は家族の悩みが多いですね。親との関係や、亡くなられた家族に対する罪悪感を打ち明けられる方もいます。男性の浮気の悩みも多いですよ(苦笑)。最近はDVの相談も非常に多いです。

僕では対応できないような悩みの場合、父や母にバトンタッチすることもあります。

この連載のテーマである死にも繋がってきますが、西洋の考え方が入ってくるより前、昔の人は、「地獄とは生きている間に行くところ」と考えていました。

どういうことかというと、欲しいものが手に入らないとか、異性に関する悩みとか、暴飲暴食がやめられないとか、イライラむしゃくしゃしたり、そういうのが地獄に落ちている状態ってことなんですね。心の悪玉菌が溜まっている状態って言ってもいいかもしれません。

そしてその悪玉菌を流すのが、お墓参りとかお寺に来ることだったんです。

亡くなった方のことを考え、手を合わせる。その間だけでも心が静まって、地獄から離れていられますから。物言わぬ亡くなった方、仏様の前で手を合わせる。そうすると、仏様は何も言わないけれど、次第に自分の中で解決していく。それが今でいうカウンセリングのようになったんです。
だから昔の人は、「生きながらにして、地獄にも行けるし、天国にも行ける」とも考えていたんですよ。

亡くなって天国に行くこと、それが “成仏” なんですね。お釈迦様が目指していたのは、生きている間に天国のような心持ちになること。
心の悪玉菌を取り除くっていうことが、生きていながらにして仏様の世界に行くということなのかな、と思います。

亡くなった人たちというのは、今生きている私たちを助けてくれているんですよね。姿も見えないし、話もしてくれないけれど、もしかしたら僕たちのことを見てくれているかもしれない。だから信じることが大切なんだと思います。

カルト教団の事件も多かったですから、残念ながら日本では信仰という言葉があまりプラスの意味で使われなくなってしまっていますが、一人の教祖を信じるのではなく、目に見えないものを信じるのが信仰の本来の姿なんです。

 

[前編終わり、後編に続く]


妙善寺 イベント&お稽古情報

的場さんのお寺、妙善寺では、たくさんのイベントを開催しています。どなたでも参加できますので、気軽にお問い合わせしてみてくだい。的場さんに会うだけでも、なんだかホッとできますよ。

◼️「お経を学び聞き書き写す会」
毎月第1土曜日17:00〜
講師:住職
会費:無料

◼️「妙善寺囲碁クラブ」(初心者&入門大歓迎)
3月10日(日)15:30〜17:30
講師:王唯任五段
会費:2,000円

◼️「お寺deほっと♡縁むすび」
六本木のお寺で、婚活&ステキ体験で癒されませんか?
お寺ならではの、「癒しの婚活イベント」
3月22日 (金) 19:00〜21:00
会費:男性 4,000円/女性 3,000円

【お問い合わせ】

すべてのイベントのお問い合わせは、下記メールアドレスまで。

myozenji55@yahoo.co.jp


編集室

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