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Nā ʻŌlelo Liʻiliʻi ♯16 / 日高しゅう

『Nā ʻŌlelo Liʻiliʻi(ナー オーレロ リイリイ)』、ハワイ語で「ちいさなことばたち」。
ハワイでは言葉に「マナ」と呼ばれる神聖な力が宿っているとされています。
素朴だけれど、奥が深い、知るとちょっとしあわせになるハワイの言葉をご紹介します。

Kāne(カーネ/男性)Wahine(ワヒネ/女性) Māhū(マーフー/両性)

今回は、ハワイのジェンダーについて。

ハワイでは古来から、3種類の性があると考えられており、社会においてそれぞれが違った役割を担っていました。

まずはKāne(カーネ/男性)。男性が担う大きな役割は「生産」。
家族が食べていくために、狩猟に出かけたり、タロイモなどの作物を育てたりします。
そしてもうひとつの大きな役割が、「戦い」、それは外敵から家族を守ること。家族とコミュニティーを守るために、争いが起きた時には戦士として戦います。

Wahine(ワヒネ/女性)は、「生殖」。
食事作りなどの家事で生活の基盤を整え、子どもを産み育てるなど、主にコミュニティーの中の仕事を担当し、次の世代に命を繋ぎます。

そしてもうひとつ、ハワイの人たちにとって重要な性が、Māhū(マーフー/両性)です。
Māhūは、平たく言うとトランスジェンダーのこと。 現代では「男性でも女性でもない」と考えられがちですが、ハワイの考え方では「男性性、女性性、どちらも持っている」。
Māhūには癒しの力もあるとされ、特別な存在として尊敬されていました。彼らが担ったのは、歌や踊りなどの文化や、医療などの癒し。衣食住の範疇を超えた、コミュニティーにとって重要なものを次の世代に継承する役割でした。
Hulaをされている方は、KumuMāhūが多いことに気付いている方も多いと思いますが、このような歴史的な背景があります。

ハワイの人々にとって、KāneWahineMāhūは、どれが欠けても成り立たない、社会を構成する大切な3つの柱なのです。

ハワイでは古くから当たり前のように存在していたMāhūですが、男性と女性の二つの性がベースとなるキリスト教の考えが主流の現代のハワイでは、悩みや葛藤があるようです。残念なことですが、差別を受けたり、偏見に満ちた扱いを受けることも。
現代に生きる彼らの姿は、映画『Kumu Hina』に描かれているので、興味のある方はぜひ見てみてください。
この作品は、MāhūであるKumu HulaKumu Hina(クム・ヒナ)に密着したドキュメンタリー。華やかなKumuとしての姿だけでなく、パートナーとの関係性との悩みなど、一人の人間として葛藤する姿が描かれています。

ハワイでKumu Hinaの踊りを間近で見る機会がありました。彼女は身体的には男性ですが、女性のフラを踊ります。女性らしい繊細な表現と、男性ならではの力強さの両方が備わった、男女両方の魅力があり、まさに「男性性、女性性、どちらも持っている」フラでした。

さて、ハワイでは先月、新しい法案が可決されました。 それは、2020年7月1日以降、ハワイの居住者には、ステートID(州が発行する身分証明書)と運転免許証の性別記載欄に「男性」「女性」ではない第三の性別「X」を選択する権利が認められるというもの。
もちろん世界中でLGBTQが認知されつつある現状に即したものでありますが、それと同時に、ネイティブハワイアンの文化を尊重するという側面もあるのだそうです。

最後に。

ニュースやSNSで目にした方も多いと思いますが、今ハワイでは、ハワイ島・マウナケアにTMTという巨大な望遠鏡の施設を作る計画に反対する地元住民が立ち上がり、大きな運動が起きています。
多くの国からの移民が暮らし、様々な宗教や文化が混ざり合うハワイ。だからこそ私たち外国人にとっても居心地がいいのですが、その土台を築いてきたのは、それらを受け入れてきた懐の広いハワイアンの人々がいたからだということを忘れてはなりません。

彼らがずっと大切にしてきたものがきちんと守られますように。今改めて、祈らずにはいられません。

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日高しゅう

日高しゅう

1981年生まれ。東京外国語大学イタリア語学科卒。
イタリア・フェラーラ大学にて、中世美術史を学ぶ。


アロマテラピー業界およびIT企業で広報として勤務後、2017年、語学と文化を学ぶため、ハワイに留学。ハワイ島のロコからハワイ語を学ぶ。


ハワイ各地を旅し、帰国後、つるやとともに『Hōʻailona』を立ち上げる。
入門者向けのハワイ語講座講師としても活動。

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