MAGAZINE

Hōʻailona

  • セルフケア
    LOVE BODY & MIND

Aromaクンクン ♯4 / 原田裕子

待ってました、ローズウォーター

少し前に我が家にブルガリアのローズウォーターがやってきました。

5月に収穫されたローズの花から得られたローズウォーターは、毎年このくらいの時期に私の元にやってきます。ボトルを開ける瞬間には、たくさんのローズがブルガリアの空気とともに空間に飛び出してくるように感じられて、それは1年に一度の贅沢な時間です。

また肌にのせたときにふんわり漂うその香りからは、植物の生命力そのものが感じられ、毎朝心が満たされ、お肌もみずみずしくふっくらするような気がします。

今日はそんなローズウォーターのお話をしたいと思います。

ローズウォーターは芳香蒸留水のひとつで、ローズオットー精油と一緒に得られます。アロマテラピーで用いる精油の多くは、水蒸気で油細胞(精油を蓄えている細胞)を壊して得られ、その方法は水蒸気蒸留法と呼ばれています。油細胞が壊され水蒸気と一緒になった芳香成分は、冷却されることで気体から液体に戻るのですが、集められた液体は二層に分かれます。片方は水に溶けにくい芳香成分、もう片方は水と水に溶けやすい芳香成分が含まれています。水に溶けにくい芳香成分が精油、水と水に溶けやすい芳香成分が芳香蒸留水です。

芳香蒸留水はハイドロレイト、ハイドロゾルなどとも呼ばれます。日本ではフローラルウォーターなどの名称で売られていることも多いのですが、原料植物が花でなくても芳香蒸留水は得られるため、ここでは芳香蒸留水としておきます。

ローズウォーターに含まれる芳香成分で特出すべき成分はフェニルエタノールで、ローズPとも呼ばれています。ゲラニオール、シトロネロールとともにローズの三大主成分で、その爽やかなローズの香りは何とも言えないものです。このフェニルエタノールは水溶性のため、水蒸気蒸留法で得られたローズオットー精油にはわずかしか含まれず、そのほとんどがローズウォーターに含まれています。

昨年、川崎医療福祉大医療技術学部の上野浩司講師(神経生理学)らの研究グループが、「フェニルエタノールを吸わせたマウスは、ストレス環境下でうつのような状態になりにくいことを確認した」という記事が新聞に掲載され話題になりました。もちろん、マウスへの実験がそのまますぐに人にあてはまるというわけではありません。人には香りの好き嫌いや、それぞれにその香りと記憶との結びつきがあるためです。それでもこれはとても興味深いお話ですね。

また、ローズウォーターを歴史的にみると、アラビアで精油の蒸留法が確立された10世紀の頃からあらゆる場面で活用されていて、イブン・シーナーも積極的に治療に用いていたそうで、古くからさまざまな効果が知られていたようです。

さて、今年我が家にやってきたローズウォーターもとてもふくよかな良い香りです。成分調整などしていないため、毎年香りが異なります。今年の香りより昨年のものの方が良かったなと思う年もありますが、それが自然のものを使う豊かさ、良さだと思っています。

最後に、精油や芳香蒸留水の原料植物となるローズは、フランスのグラースや、ブルガリア、トルコなどの産地が有名ですが、気候変動や、低価格を求めるためなど様々な理由で、インド、中国などもその産地になっています。香木と違って栽培していますから、急になくなってしまうことはありませんが、精油一滴のために、美しいローズの花が200個以上も使われていることを考えると、ローズ精油もローズウォーターも大切に使っていきたいものです。

精油も芳香蒸留水も植物から得られる貴重なものです。アロマテラピーをきっかけに1人でも多くの人が自然や環境について興味を持ってもらえると嬉しいです。

 

 

原田裕子

原田裕子

香司 / アロマセラピスト / 香りアドバイザー
会社員を経て、好きが高じて香りの世界へ。


調香、アロマテラピーと西洋の香りから始まり、現在は日本の香りを作る香司としても活動。


自然の恵みである香りを消費するばかりではない、"サステナブルな"香りのある暮らしを提案している。

法人向けに、オリジナルの香りの開発も行う。

関連記事

CO-PARTNERS