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    “EAT ME, DRINK ME”

栄養と料理・編集長ノート ♯10 / 浜岡さおり

女子栄養大学出版部発行の月刊誌「栄養と料理」の現役編集長による連載。日々更新されている栄養や健康に関する情報や、料理レシピにまつわるあれこれを、編集長の日々とともに綴っていきます。

腸内環境と、腸にいい食べ物は、人それぞれ

腸内にはおよそ1000種類、100兆個(※1)もの細菌がいるようですが……自分では全くわからないものですねぇ。
たくさんある細菌のパターン(どんな菌が何割いるとか)も人それぞれで、腸をよい状態に保つために役立つ食べ物も異なる可能性があるそうです。腸内フローラ研究をしている(株)メタジェンCEOの福田真嗣さんは『栄養と料理』2018年5月号の巻頭インタビューで、「腸内デザイン」という言葉を使って表現していましたが、おもしろいですよね。外側にどれくらい見えるものかはわかりませんが、少なくとも腸内の健康状態は「元気」や「肌つやのよさ」には表われそうだなあ、なんて思い、おなかの中にいる仲間たちを育てるつもりで、私にも彼らにも「おいしい」食事を日々心掛けています(笑)

「便」で体調を見る

べんのお便り』という本の著者でもある腸内細菌の専門家、辨野義己さんからは、やはり小誌の取材を通じて「便」を見ることの重要性を教えていただき、以来、便をよく見るようになりました。個室の中でのことは、なかなか他人とは共有できる話題ではありませんが、便は出てくるまでの生活を物語ります。食事記録や生活記録があれば、便秘や下痢に影響したことを推測することもできるでしょう。しかし、こういった情報は、記録しなければ「あっさり」記憶から消えてしまうんですよね……。おなかを壊したときこそ覚えておかないと、次にまた同じ目に遭うわけなんですが、けっこう忘れてしまうもので(汗)

20歳代のとき、腸の内視鏡検査を受けた記憶はあるのですが、「なぜ、受けることになったのか」の記憶がすっぽり抜けてしまっています。意識不明とかでもなく、検査食を薬局に買いに行ったことも、お尻が割れた検査着も診察台も、「特に問題なかったけど、あなたの年ごろだと乳がんにも気を付けてね」といわれたことは覚えているけれど、経緯はぼんやり。物心はとっくについているし、自分で手続きしたはずなのにと、我ながら驚きました。

食物繊維は、なにを食べればとれるのか?

  さて、話は少々飛びますが、「腸活」といえばよく出てくるのが乳酸菌と食物繊維。食物繊維は、腸内を健康な状態に保つ腸内細菌のエサになるといわれますが、どんな食品をとれば食物繊維がしっかりとれるのでしょうか。
たとえば、食物繊維を謳った商品に比較例としてあげられている「レタス1個(玉)」はだいたい400g(※2)で、その食物繊維量は4.4g(※3)。成人女性にすすめられる食物繊維量は一日あたり18g以上(※3)なので、レタス1個で約4分の1がとれるということなんですが、だいたいレタスは1個も食べないですよねぇ。コンビニや外食についてくるサラダだと、せいぜい、外葉1枚(40g程度)という感じではないでしょうか。もっとも、まるごと電子レンジでチンすると、さくっと食べられてしまったりもするんですが、あまり経済的ではないなぁとも思ったり。

私のデスクの必需品である2冊。女子栄養大学の成分表には成分以外にも、食事摂取基準(栄養素は何をどれだけとればいいのかを示した国の基準)をはじめとした資料が網羅されているので、食や健康に関して記述するときに非常に便利。ちなみに年度版なので、毎年新しい情報に更新されます(2020年版は来年の春ごろ発売予定)。

安くて無理なくとれる食物繊維源は、野菜以外にもいろいろあります。たとえばざるそば1枚で3.6g、スパゲティ(乾100g)で2.7g、全粒粉食パン(6枚切り1枚)で3.3gなど(※4)。こういったものは、普通に食べるだけで、食物繊維もそこそことれます。また、大豆や白いんげん豆も食物繊維が多く、2019年12月号でも「腸活レシピ」と称してさまざまな料理や、おからで作るマフィンを紹介しています(ちなみにおからマフィンは1個で食物繊維が4g以上とれるレシピ)。食物繊維はこれらのほか、海藻や果物、きのこ、芋からもとれるので、いろいろな食品を選ぶことで、おのずと食物繊維量も増やせそうです。

年に一度は「便潜血検査」を受けましょう。

大腸がんは女性の死亡数ナンバーワンといわれる昨今。特に高齢になるほど消化器系が増えるそうですが、家の排水管が劣化していくようなものなのでしょうか……メンテナンスが大事ですね。さて、早期発見の手立てとして、自分の便を少量提供することで便潜血検査が受けられ、初期のがんを発見することができます。職場の健康診断や人間ドック以外に、自治体を通じて一定年齢以上は無料検診を受けられたりもします。「今まで気にしたこと、ないかも」という方は、ぜひお住まいの地域の市区町村報や道端の掲示板、自治体のホームページなどをチェックしてみてください。

内視鏡検査の前1~2日(病院による)は、腸の中をきれいにする前段階として食事制限が課されます。これはその期間中の外食。市販の専用食は買わずに自分で考えて食べる方法を選びました。通常の選択とは真逆になりがちで難しかったけれど、勉強になりました。

私も毎年受けていますが、便潜血で陽性になり、内視鏡検査でポリープが見つかって手術を受けたことがあります。胃腸は比較的じょうぶで、下痢や便秘の悩みもなかったので再検査の通知が来たときには驚きましたが、母に話すと、「定期的に受診してるし、ポリープとったこともあるよ」とのこと。病気は遺伝が影響することもあります。改めて、健康に関する情報は家族で共有しておかねばなあと思ったエピソードでした。

スコープを入れる前に、腸内を洗浄するためのドリンク(2L)。ポカリ味なので飲みやすいけれど、下剤が入っているので急に便意が襲ってきます。飲む⇒トイレ⇒飲む⇒トイレをくり返し、OKがもらえれば終了(個室からブザーを押すと、看護師さんが“結果”を見に来てくれる)。


『栄養と料理』12月号では、今回触れた「腸」だけでなく、「胃」の話題も含めて「胃と腸の年末メンテナンス」を特集しました。忙しさに加えて忘年会や感染症の流行など、年末年始は胃腸に負担が重なる時期です。体調管理に、どうぞお役立てください。


※1 清水純「腸内細菌と健康」e-ヘルスネット(厚生労働省)
※2 『食品の栄養とカロリー事典 改訂版』(女子栄養大学出版部)
※3 『七訂 食品成分表 2019』(女子栄養大学出版部)
※4 『栄養と料理』2017年3月号


★11月9日発売「栄養と料理」2019年12月号の特集は、「胃と腸のメンテナンス」。全国書店ならびにAmazonにて。

浜岡さおり

浜岡さおり

1974年生まれ。長野県出身。
大学で栄養学を中心とした食と健康にまつわる様々な学問に触れる。


女子栄養大学出版部で書籍と雑誌の編集に携わること20年超。


現在、月刊誌『栄養と料理』編集長。特に中高年に向けて、生活習慣病を防ぐ食生活や健康管理に役立つ情報を発信している。


ガールスカウト出身。自然に親しみ尽くした若き時代の反動か、現在は都内マンションでアーバンライフ?を送る。食べることが好き。テニスも好き。

浜岡さおり

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